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最高気温26度 最低気温15度

桜は疾うに散り、吹く風には新緑の薫りが混じる。


初夏である。



家庭を切り盛りする主婦と一部の独身者が「洗濯物が良く乾く」と顔を綻ばせるこの季節。

















───の、某家某場所、で。

その恩恵を満喫しているのはこの場に於いては全員では無く。
偶然、居合わせてしまった内の約1名の心は───…喩えるなら、全身冷や汗を掻きつつ、北極で白熊と戯れた結果、
気が付けば断崖に追い詰められ、前方には口を開けた白熊、後方に広がるは氷の海ならぬブラックホール。




『一寸先は闇』




そんな科白が脳裏を過ぎったかどうかは定かでは無い、が──────…





















「何で何で何で何で何でッ!?」





訳の判らない事を云い出すのは当然(いつも)ジェット、で。



「訊かれても困る、けど」



其れでも、ついつい付き合って…相手(へんじ)をしてしまうのが、ジョー。





“……イイヨネ 見テイル方ハ、気楽デ”





溜息交じりに返答するのはイワン。
平素、無駄口には積極的に関わることの無い、老成しきった彼も、現在は台風の目在住。
人並みに愚痴の1つも云いたくなるだろう。




風に靡く、レースのカーテン

氷が浮かぶ、涼しげなグラス

包み込む、慈愛に満ちた細腕




揺り籠にも似た心地良さ、を 造り出してくれる女性(ひと)───…


…此処までは、良い。問題、は。




女性が『島村 周』と云う名の科学者、で。
その向かいを陣取るのが、銀色の髪の男性、と云う点である。








『宿敵』 『天敵』 『好敵手』









そんな生易しい科白では云い表せない、げに恐ろしき因縁を持つ2人が『普通』に対峙しているのである。


















「あら、素敵じゃない……親子、みたいで」

「じゃあイワンは弟ってこと?それヤダ…ぁ、フラン〜明日は珍珠紅茶(パールミルクティー)がいいな」

「ぁ〜…我輩推薦の紅茶が〜…」

「タピオカ、有ったかしら」

「だったら明日、店に来るヨロシ カラフルなタピオカ入ったネ」

「わーい!張大人大好き〜っ!!」

「あれ?珍珠紅茶って黒いタピオカじゃなかった?」

「カラフルな方が子供喜ぶネ」

「我輩の紅茶をそんな邪道な飲み方とはっ」

「美味しいモノに邪道も何も無いアルョ!邪道はおまハンねッ!!」





グレート推薦の紅茶を珍しくアイス・チャイで堪能しつつ。
賑やかしく会話を交わすのはクロウディア・フランソワーズ・グレート・張大人・ジェット・ジョー・ピュンマ。














「…で、ジェット 何で?ってどういう事なんだい?」


瞳を細め、穏やかに微笑みつつ、訊いてくるピュンマにジェットは勢い良く口を開いた。



「見りゃ判る、だろ!?アレだよ ア・レ」



指し示された先、は アルベルトと周とイワンが居る場処辺り。


「…普通、じゃない?」


剣呑な雰囲気でもなく、テーブルを挟んで向かい合っているだけ。





「普通なのが変だっつーの!」

「『普通』が『変』?」










微妙に噛み合わぬ会話が交わされる中、ジョーだけが口許を綻ばせ珍珠紅茶を啜っていた。





「いいよね、こういうの」

「…え?」


ジョーの瞳が話の種にされている大人達に注がれる。浮かぶ微笑、湛える安堵感、信頼───…






「天気が良くて、お茶が美味しくて、皆が元気で…」









明日の事を考えて

口喧嘩して










生命(いのち)の遣り取りをする事無く











肩の力を抜いて

只あるがままに









笑い合える、なら






















「そう…だね」


迎合するようにピュンマ、が ふわり、と 微笑む。


幸福(しあわせ)の基準、なんて判らない、けれど───…





(からだ)、に 精神(こころ)、に 満ちる、この想いに














『幸福』以外の呼び名は思い付かないね
























───…甘イヨ、其レ”








何時の間にやら瞬間移動(テレポート)して来た赤子が元居た場処を指し示す。

其処には───…









戦闘服に()を包み臨戦態勢に入っている大人気ない大人の姿があった。














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キリリク 『凛樹館』jui様
リク内容@(恐らく)自由課題






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