水 鏡
偶然、水面に映った 自分の顔 を視た。
映し出された その表情(かお)は────‥わたし のものではなかった。
ジョーが崖から落ちた後、わたしは彼の姿を求めて海へ降りた。
その途中で海面に映り込んだ自分の姿が視える。
一瞬覗いたその 表情 に、わたしは 違和感 を感じた。
─────────これは だ れ?
わたし は、こんな 表情を している の?
こんなの『 わたし 』 じゃない。
何が わたし を変えてしまったの?ブラックゴーストとの戦い?その後?
ねぇ 誰か 教えて。
こんなの わたし じゃない、わたしは こんな表情は しない。
今迄ずっと そうしてきた‥────ブラックゴーストに改造された時 さえ。
泣きはしたけれど───‥‥それでも『 強く 』あろう と 何時だって。
─────────何時 だって
─────────こんな‥‥ 普通の女の子 みたい に 甘えきった 表情
頭が混乱して感情が抑えられない。意思とは遠い処で涙が溢れてくるのが判る。
─────────ねぇ ジョー‥‥
此処には居ない彼に、心の中で 訊(と)い掛ける。
─────────あなたは 知ってたの‥‥ ?
わたしが こんな表情(かお)を すること。
崖を慎重に降りながら、わたしは『 彼 』を思い描いてみる。
脳裏をよぎるのは、いつも『 笑顔 』。
あの笑顔が近くにあれば それだけで────‥‥ 安心、出来 て。
─────────‥‥‥‥!
一瞬 呼吸が止まるかと錯覚してしまった。いつから‥‥ こんな にも彼を、頼っていたのだろう。
出逢った頃の彼の 表情は いつも憂いに満ちて───‥。
─────────その瞳を見ているのが、辛かった。
『 何時だって 微笑(わら)っていて 』
戦いの最中(さなか)、それを望む 想いが 無謀 だと判っていても。
争いを嫌う 傷つきやすくて 優しい 繊細な こころ。
わたし達が捨てたであろう 想い を持ち続けられる 無垢な 心。
『 護る から‥‥ 』
そう 自分に誓った のに────‥‥ なの に
─────────護られていたのは わたし‥‥ わたしの ほう で
水面に映し出された その 表情(かお) は。
あなたが いなければ 『 息 』をすること も────‥‥
「‥‥ふっ‥‥」
頬を伝う、ひとすじの液体が 視界を歪ませる。
「‥‥皮肉なもの ね‥‥」
わたしは独り呟く。あれ程『 人間 』でありたい と 願って────‥‥
あなたを望む こころ は 確かに『 人間 』のもの であるのに。
─────────今だけ は
『 フランソワ―ズ 』ではなく『 003 』で居たいと願う 想い は。
矛盾 も 背徳 も‥────全て 捻じ伏せて。
「あなたがいなければ」
人間 ですら 居られないよう な 息苦しさ の 原因(わけ)を
─────────あなた、なら ‥‥判って くれ る?
「無事でいて」
その為なら何だって出来る。
─────────お願い だか ら
わたしの視界に 燃えるような赤い髪の少年の姿が入ってきた。
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ビミョー‥‥えぇ、色々と‥
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