(てんかい)















さらさら
さらさら











白磁器のように白く滑らかな
細い指の間をそれは惜しげもなく零れ落ちてゆく。







「詐欺、よね…此れ」







小さく吐き出された科白は失意とも羨望とも区別が付かず。
ある種、独特の響きを含んで。
無防備に開け放った窓の、鼻先を掠める、潮風。
冬間近とは思えない、暖かな日。微かな…次の季節の気配(におい)










ふわふわ
ふわふわ







差し込む日差しのように、
淡く頼りない



───まるで彼本来の気質(もの)のように






「何時もはあんなにオトナ、なのに、ね」











曝される無防備な寝顔(かお)
指の間から髪が全て(こぼ)れ落ち、宙に浮いた手は傍らで眠る人の頭上に同じ形の影を落とす。


眠りに着く前、の、まどろんだ空気を纏うフランソワーズを視線の端に留めただけで、ジェットはそっと扉を閉めた。





















「イワンに妬いてもしょーがないしな、ウン」



オレってオットナ〜、と自画自賛しつつ、階段を笑顔で降りる。降り切った処でジョーとすれ違った。




「…おい、ジョー」
「ん?何?」
「その手の中のモンは何だ?」
「ピカチュー」
「違うっ!!」
「ハム太郎の方が良かった?僕はどっちも似合うと思うけど」




ねー、と、真新しい着ぐるみに包まれた腕の中の赤子(イワン)に微笑みかける。








「さっき、の、は…」





ぐるぐるぐる


何度考えても導き出される結論は只ひとつ。

















響き渡る怒号と足音


そんな中、着ぐるみの赤児だけが我関せずとばかりに独り幸せに微睡(まどろ)んでいた。










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afterword






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