(じじつ)















全ての 根源

命を育む大地









冬、だというのに 水が恋しいと感じるのは 何故────‥?















フランソワーズは洗い物をしながら、独り思案していた。




「欲求不満?」

「‥‥‥は?」




禅問答のようなそれ、は ある意味繰り返される日常、で。




「ジェッ、ト?」
「水が恋しかったりするのは欲求不満、なんだと」
「‥‥他人(ひと)のモノローグを 許可無く、読まないでくれる?」






────‥小言、など 云ってみた処で何処吹く風。

ジェットはフランソワーズの背後に立つと、耳許に己の薄い唇を寄せ、吐息混じりで囁く。




「何なら付き合う、けど───‥‥?」





    ─────‥一体、『何』に 付き合うつもり、なの?





そんな胸中なぞ知る筈も、なく。ましてや『解釈違い』など、想像すらしていないであろう。

『暖房の効かせ過ぎに因(よ)る乾燥の為』等と─────‥‥。



本能の赴くがまま、手を細腰に巻き付け、その距離を縮めようとするのだが────‥‥











めしゃっ









「‥‥めしゃ?」


奇怪な音声(おと)が2人の距離を縮めることを阻害する。音の根源に視線を向ければそこには、補助器具もなく、自力で フランソワーズの背中に張り付いている、赤児(あかご)。

喩えるなら、その姿は‥────モモンガもしくはムササビ。




「‥‥何してるんだ、お前」

“失敬ダナ 見テ判ラナイ?”

「なーにが『失敬だな』だっ この悪魔っ」

“小悪魔、ト 云ッテクレタマエ”

「煩ぇ オニア‥‥」










最後まで云い切らぬうちに、ジェットの躯(からだ)はキッチンのコーナーで白煙を上げていた。
フランソワーズ、は 肩越しに、2人の様子を見遣ると 困ったような笑顔を浮かべ、そっと呟く。























実年齢1番上だろう2人、が 実は1番大人げないのよね────‥と。










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