僕のそばに















         愛しいと。


         好きだと思う、ほど。






         臆病になっていく自分が、もどかしい。












        「ジョー」












         僕を呼ぶ、その澄んだ、声。
         出会ったときから変わらない、強い、そして優しい紺碧の、瞳。

         太陽の下(もと)に輝く、金糸のような、髪。


         眩しい、白い、肌。




         ひとつひとつ、が。








         こうして彼女を────『フランソワーズ』を、存在させている。








         波打ち際に、すらりと立つ、華奢な姿。
         波を追って、そして波から逃れて。
         素足を浸しながら、水と戯れる、その綺麗な表情。







        「ジョー。こっち、よ」







         余すところ、無く。







        「水が、とっても綺麗」







         その全てを、見つめていたいと思うのは。







        「吸い込まれて、しまいそう」







         その全てが欲しい、と、思うのは。







        「ねえ、ジョー」














         贅沢な望み、なのだろうか──────















         それなのに。


         『好き』だと思う、ほど。
         『愛しい』と、どうしようもないほど気持ちが高ぶって、も。





         この指先を、伸ばすことが出来ない。





         打ち明けてしまったら。
         触れてしまったら。











         何もかも壊してしまいそうで、全てが止まってしまいそうで─────恐いんだ…
















        「ねぇ、ジョー」


         不意に話しかけられて、僕はハッと意識を現実に引き戻した。
         彼女は、背後の海と同じ紺碧の瞳で、優しく…柔らかく、僕に微笑みかける。
         そっと白い手が海水をすくい上げ、その指の間からこぼれ落ちる雫、が。
         彼女の内なる悲しみを、過去の傷跡の涙を──────そして。


         過ぎ往く時を、表しているように、思えた。








         辛い、過去。
         変わらない、身体。
         これからもずっと。
         それを、背負って。







         生きて…









                    生きて 生きて













                           世界の終わりをも見届けるほど、永く──────




















         その絶え間ない、時間の中で。

         想いだけを、刻んで。

         もどかしい気持ちも、一緒に、刻み込んで。




         だけど。





         君がいてくれるなら。
         君が存在し続けてくれる、なら。





         永い……永い時も、きっと。









         そんなもの忘れるぐらい、あっという間、だと、思うんだ。





















        「ジョー」




        「────────フランソワーズ」










         これからも、ずっと。
         その終焉まで、共に生きていこう、フランソワーズ。


         この身は時を得ても、何も変わらないけど。



         共に走り抜けた、闇の数だけ。

         幸せな光があると、信じている、から。













         僕は君に、何も出来ないかも、知れない。

         だけど。




         君が泣きそうになったとき。
         君が寂しい気持ちに、支配されてしまった、とき、は。



         僕を頼って、欲しい。










         僕のそばに、来て、欲しい。










         抱きしめることすら、恐くて躊躇ってしまうかもしれない、けど。


         君を支えたいと、愛しているという気持ちは。










         誰にも負けない、から───────












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