花占い 〜 下克上罰ゲーム2 〜





        「 好き 嫌い ‥好き ‥‥嫌い  ‥‥‥ 好き ‥‥ 」



         長い指が、ささやかに呟かれた科白(ことば)と共に 花びらを散らして。

         ひら り






        「 リリカル ね‥‥ 」
        「 リリカル ‥‥? 」
        「 果てしなく遠いぞ 」
        「 リリカルって何? 」
        「 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 」



         ひらり ひらり

         可憐 ‥‥ とは云い難い 色の花びら、が 彼の人の廻りを彩ってゆく。
         傍らには、まさに『 山 』と表現するに相応しい、花の大群が鎮座している。


         黄・白 ‥‥ そして 黒。


         そして現在(いま)散らしている 血の色を模したような ‥‥ 紅い それ は、


        『 死人花 』の別名を持つ、毒々しい迄の 紅 を纏いし『 彼岸花 』


         そして更に傍らの山を築く 黄・白・黒 の花、は ‥‥‥ 全て『 菊 』。






        「なぁ‥‥菊の花びらって 大体どれ位付いてるんだ?」
        「 ‥‥さぁ? 知らない わ 」
        「選んだ、のは お前さん だろう」
        「選んだ『 基準 』が違うもの ‥‥今回のお題 理解してる?」
        「勿論」
        「簡単なコト よ 『 多ければ多いほど良い 』の 花びらの数 なん て」



              気持ち は 判らない でも ない
              余程 『 前回 』が 悔しかった ‥‥ んだろう が ‥‥

              ‥‥ それにして も



        「余り 縁起の宜しくない 花の 選択、だな」
        「しかも 初っ端から『 彼岸花 』だし ね」

         各々(おのおの)苦笑しながら、ピュンマとアルベルトは視線を交わす。
         ほぼ同時に移した 視線の先には ‥‥ 美しくも本物の毒を孕んだ 大輪の華と思しき
         女性 ‥‥ 『 紅一点 』 フランソワーズ。



        「ほらっ ジェット!脚っ!!ちゃんと『 綺麗に横座り 』してよっ!それは
         最初に云っておいたでしょ!?」
        「〜〜〜っ!!だ〜か〜ら〜ぁぁぁぁっ!!!何でオレがこんなコトッ‥‥」
        「そんなの 決まってるじゃない」
         フランソワーズは 涼しげな表情(かお)で さらりと科白(ことば)を還す。




        「「「「「 ゲームに負けた から 」」」」」










         ‥‥‥ そう、なの だ。

         そもそもの話は先達てのカードゲーム。その際に用いられた『 下克上ルール 』。
         つまり、『 勝者が敗者の云うコトを訊かなければならない 』と云う、ルールである。
         前回の勝者 ‥‥‥ フランソワーズは あの『 屈辱 』を果たす べく、この度
         リベンジと相成ったのである。
         そして ‥‥‥

         見事に『 勝利 』をもぎ取ったのであった。



         ちなみにフランソワーズのお題は『 似合わないコト 』。
         其処でジェットを除いた 参加者全員 ‥‥‥ フランソワーズを筆頭、に ジョー、
         アルベルト、ピュンマ、グレート の5名で相談した結果、導き出された『 解答 』が

        『 花占い 』

         だったので ある。
         その後の『 オプション 』を付けた のは 勿論、フランソワーズである が。



         花の種類、色の選択、に 座り方 ‥‥ そして、髪型。

         ジェットの 彼独特な髪型は、現在(いま)ムースやらジェルやらで 完全に毛先を
         下に向かせ 2つに分けた上で、三つ編みを 施されている。‥‥ しか も、
         その毛先を飾る のは ‥‥‥ 真っ白なレースをあしらった、光沢の在るリボン。










        「『 花占い 』似合わないかなぁ‥‥ ジェット」

         ジョーが首を傾(かし)げ、不思議そうな表情で ぽつり と 呟く。
        「似合うかどうか が問題じゃないのよ ジョー」
         フランソワーズが、ジョーにだけ聴こえるように そっと囁いた。
        「‥‥ぇ?」
        「『 似合わないコト 』じゃなくて『 嫌がらせ 』だもの ‥‥ホント、は」

        「『 嫌がらせ 』‥‥?」

        「だって‥    あんな コトっ しておいてっ‥‥」
         そう云って俯くフランソワーズの頬 は、うっすら桜色に染まっている。その表情も
         きゅっ と噛み締める唇、も 何もかもが ‥‥‥ 可愛らしく て。

         ‥‥ この際、あの直後 ジェットを『 張り倒した 』事実を 自分の記憶から
         削除しよう と 固く 心に誓う ジョーであった。



        「しかし マドモアゼル‥‥ 色彩がイマイチだと思うがねぇ 我輩 は」
        「‥‥やっぱり?白が多すぎたわよねぇ アレじゃ リボンが映えないわ」
        「あれでは 折角のシルクのリボンが負けてしまう なぁ ‥‥勿体無い」

        「‥‥リボンの持ち主がグレート と云うコトのほうが よっぽど気になるんだけ ど」

        「何を云いなさるかね ピュンマよ‥‥ 我輩は『 役者 』何でも持ってて当たり前」
         肩を竦め グレートは、芝居掛かった 盛大な溜息を付く。



              それ以前の問題 ‥‥‥ のような 気がする、が ‥‥






        「あ〜っ!もう 止めだっ 止めっ!!」

         手にしていた彼岸花を 握りつぶし、その腹立たしさを 前面に押し出し、ジェットは

         徐(おもむろ)に 立ち上がる。
        「こんなコトしたって ちぃぃーっとも楽しくねぇっ!」
         しゅるん と衣擦れの音をさせて リボンを外しながら、徐々に近付く ‥‥ 距離。


         ‥‥‥‥ フランソワーズ に。


        「 なっ ‥‥なに よぉ っ‥‥ 」

         ジェットが フランソワーズの目の前 ‥‥ 至近距離、で 止まったと思うと
         亜麻色の髪を一筋 掬い取り、直前まで自身の髪を 彩っていた リボン、を
         掬い取った髪に 結び付けた。



        「 やぁ〜っぱ 似合うなぁ お前 ‥‥口は めちゃくちゃ悪ぃ ケド 」



         にぃっ と 邪気の無い笑顔のジェット、に フランソワーズは 只、瞳を瞠って
         その表情を 呆然 と 口を半開きのまま ‥‥‥ 眺めている。
         半(なか)ば 固まったままのフランソワーズを 不審に思ったのか ジェットは
         その長身を屈め ‥‥‥ 目線が合わせられる 高さ で ‥‥ 止める。


        「 ‥‥フ〜ラ ン? どうかした か ??」


         その訊いと声音(こえ)で 我に還った フランソワーズの目の前一杯に拡がる
         仲間、の ‥‥‥ ジェットの 表情(かお)。
        「  ぇ? ‥‥ぁ っ ‥‥なっ 何でも ないっ ‥‥からっ!」

         ぱぁっ と、一瞬 フランソワーズの頬が先刻のような 桜色に染まったコト を
         真横に居た ジョーが見逃す筈も なく ‥‥‥ 。






         びしぃっ!

         ‥‥‥ 表現し難い音と共に ジェットは 忽然と姿を消した ‥‥ かと思ったら
         遥か後方 ‥‥‥ 部屋のコーナーまで吹き飛んで いた。
         摩擦熱の為か 躯(からだ)から 白い煙が上がっている。それが『 誰 』の
         せいであるか、は ‥‥‥ 訊くまでも なく。

         ジョーの背後 に 暗雲が見えるのは、彼等の気のせいでは ‥‥‥ あるまい。






        「‥‥我輩『 逝った 』に千円」
        「あ、僕もそっちに賭ける 同額」
        「ぼくも!そのつもりでやったし」
        「懲りないわねぇ あなた達 も」



              ‥‥‥ 否(いや)、それ以前に、だ






             「 全員 同じ方に賭けたら 『 話 』に ならんだろう が 」












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