突発性低気圧










         「ね、次 アレがいい!」



         一際 華やかな声を上げ、独り 跳ねるように 駆けて行く 銀色の 長い 髪。
         楽しそう、に 無邪気に笑う 異国の少女 の その表情(かお)に、通りすがりの人々は 温かな
         視線 を 投げかけ────────‥‥




         「おい そんなにハシャぐと こける ぞっ‥‥‥ っぅうわ わっ!?」




         べしゃり


         ───まる で 蛙を踏み潰した時のよう な 神経に障る音を 立てた のは。
         「こけるぞ」と 注意する横から転ぶ『今日も素敵に迂闊人生まっしぐら』な 長っ鼻────
         もとい、ジェット・リンク──────永遠の18歳。




         「『 普通にしてても 転ぶ 』奴も いるしな」

         「有る意味 器用、だわね それって」

         「莫迦ジェット〜っ」


         「煩いっ!!元はと云えば お前が急に 走り出すからだろぅ がぁぁっ!!!」
         「ばーか ばーか ばーかぁっ」
         「すっげ〜ムカつくっ!! ぁ こら 待て クロウディアッ!シメるぞ コラァッ!」







         「相変わらず、ね お宅のお子さん」
         「‥‥‥誰が『 お宅のお子さん 』だ」
         「無駄に鼻が長い、粗忽な エセ青年」

         「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

         “否定シナインダ‥‥不憫ダネ、じぇっと”
         「本当にねぇ あんな大人になっちゃ 駄目、よ イワン」
         “ぼくガ『 アァ 』ナル訳 ナイジャナイ”




               ─────────酷いのは お前ら、だ




         苦虫を噛み潰したような 表情、で アルベルトは 周(あまね)と イワンの会話───
        『 笑顔で 悪魔のような会話を 交わす 』超能力持ち『 2人組 』を眺めていた。
         端から見れば『 微笑ましい母子 』だが、その中身 は──────‥




         「ねぇ 訊いてるの?アルベルト ねぇってばっ──────ぱぱ ?」
         「‥‥‥お前もか‥‥‥」
         「?何 云ってんの?老化? ねぇねぇっ あたし、アレやりたいの!」
         自分の裾を引かれる感覚 に、瞳(め)を向けると 先程まで走り廻っていた少女。




         「‥‥‥独りで やれ」

         「あ、冷た〜いっ」




         少女は ぷぅっを頬を膨らませ、上目遣いにアルベルトを睨む。


         「僕でよければ付き合う、よ クロウディア」

         くすくす と笑いながら、ジョーが クロウディアの傍らへ跪き、顔を覗き込む。
         「ホント!?」
         一瞬にして、少女はその表情の色彩(いろ)を変え───────満面の笑み、で 前方を指差す。
         その先、には───────────














         「‥‥で、ホラーハウスな訳?」
         周はうんざり とした表情で傍らの同行者───────ギルモア博士とコズミ博士を一瞥する。

         「大丈夫、なの?これ‥‥途中で心停止されても困る」




         時に場所は某テーマパーク。

         相変わらず、協調性の欠片も無い 集団─────アルベルト、周、ギルモア博士、コズミ博士、と、お子達
         クロウディア、イワン、ジェット、フランソワーズ──────そして、ジョー。
         「ほぉ 中々失礼な物云いなお嬢さんじゃの」
         ほっほっほっ と判っているのか いないのか、読めない笑いを零す、コズミ博士。




               ─────────何て チャレンジャーな‥‥!




         誰もが そう思ったが、当のコズミ博士は、何処吹く風。

         「伊達に 歳を取っとる訳じゃないぞぃ この程度でくたばるようなヤワな心臓は持っとらん」
         「ツラの皮も厚そうよね」
         「ほっほ〜ぅ そんな口の悪さも魅力じゃなぁ」
         周は 普通の人間ならば凍死しかねんばかりの瞳、で コズミ博士を見つめる─────が、
         それ以上 何も云わなかった。
         顔色1つ 変えない その飄々とした表情、を ギルモア博士は今にも魂の抜け出そうな心持ち で
         しげしげ、と 眺める。




               ─────────流石は 古狸、侮れん‥‥




         ─────端から見れば 自分も古狸の部類だ、ということに気付いていない ある意味、天然系古狸の
         ギルモア博士と 知的確信犯古狸 の コズミ博士。
         『 天才と何とかは紙一重 』『 類は友を呼ぶ 』と云う言葉があるように、まんま体現な2人。















         暗闇の中を、ひたひた と 足音だけが響く。

         「‥‥イワン 透視して 展示物の構造、覗くんじゃない わ、よ」
         “テヘッ バレテタ?”
         「アンタの考え、なんて 解り切ってる」




         「思考パターンが自分と同じだから、だろ」




         結構、怖い会話 の中 更に寒風を吹き込ませる者 約1名。その寒風をモノともせず、紅く彩られた
         口唇に 鮮やかな微笑を宿した上 更なる凍風を吹き込む ツワモノ、これまた 約1名。

         当の本人達は至って平然 としているが、不運にも廻りに居た者達、は『 これでもか 』という程に
         蒼褪め、硬直している。




               ─────────どうしよう‥‥こんな処で喧嘩されても 困る‥と、思うんだ、けど

               ─────────どうする、って どうするもこうするもないでしょ!?ジョーッ

               ─────────へ?そっ、そぅ‥‥か、な

               ─────────そーだぜっ!ここは1発‥‥

               ─────────『『『 逃げるしかない 』』』




         ─────非常に消極的且つ、後ろ向き な 発想、では ある、が。
         不運にもこの場に居合わせてしまった クロウディア、ジェット、ジョー、フランソワーズの声が
         回路を通して綺麗に重なった瞬間、ソレは突如として響き渡った。

         まるで狙い定めたかのよう、に────────────‥





         「自滅回路しか持たないヒト に、云われたくないんだけ、ど?」





               ─────────あーぁ やっぱり こうなるんだ‥‥

               ─────────たったアレだけでよく喧嘩出来るわよね 一種、才能だと思うわ

               ─────────才能、って クロウディア‥‥

               ─────────っつーかさぁ‥‥こっちのが、よっぽど『 ホラー 』じゃねぇ?





         「‥‥ほぉ?」




         ─────それ、は どちらの口から紡がれた科白(ことば)だったのか は、定かではない‥‥が。
         廻りの反応 は────────非常 に、早かった。
         イワンは周の腕からフランソワーズの腕の中へ 瞬間移動(テレポート)し、ジョーとジェットは
         コズミ博士とギルモア博士を抱え、クロウディアは 観念移動で ふわり、と 宙へ浮かび上がり、
         最後尾を陣取ると、防御壁(シールド)を張る。




         「よし!準備万端、これで大丈夫っ!!どっからでも掛かって来なさ〜い」




         けらけら と、自信満々に笑う クロウディアの表情(かお)が、何処か 引き攣っていたよう に
         思えた、のは────────気のせい、では あるまい。







         「しっかし、毎回毎回 ネタもなしに 喧嘩出来る よなぁ〜」


         半ば、呆れ顔でジェットが感想を述べる。


         「本人達 至って大真面目、みたいだのぉぃ」


         ほっほっ と、相変わらず 判っているのか判っていないのか判らない マイペースぶりを本領発揮度
         120%のコズミ博士。まるで縁側で茶をしばきつつ 世間話をするような口ぶり、で ある。
         ギルモア博士、は と 云えば─────こちらも相変わらず、順調に その横でおろおろするばかり で。





         「こう云っちゃ 何だけ、ど‥‥『 1番大人の振りして 1番大人げねぇ 』 よな あの、2人」
         ジェットの発言に、ジョーとフランソワーズは 凄まじく、目を剥く。
         笑いたい、のか 泣きたい、のか‥‥如何とも表現し難い面持ちになる 2人。






         “‥‥ジェット 二 云ワレルヨウ ジャ、アノ2人モ 終ワリ、ダネ”




         さり気なさを装いつつ 盛大な溜息を付く イワン、の科白(ことば) は、すっかり俯いて
         しまっている ジョーとフランソワーズの『 心の声 』を代弁する よう でも、あり─────────




         「あたし は あんなオトナにならないよう、に しなくちゃ!」




         すっかり沈み込んでしまった空気を払拭しようとするように カラ元気 とも思えるような 場違い 、な
         程の 元気っぷりを発揮する クロウディア だ が‥────────




         「あははははっ お前が『 オトナ 』っつーのも何か ミョーだよなーっ」






         「‥‥ ほ〜 ぉ?」








         ─────ぴきん、と。

         先程、とは 打って変わったよう な 『 貼り付いた 笑顔 』 と 『 凍り付く 空気 』。




               ─────────忘れて、た‥‥




         自分達 も『 台風の目 』を孕んでいた、コト を。




               ─────────大人げないオトナ 2人、の『 集大成 』が



               ─────────『 真横 』に 居た、こと‥‥










         「‥‥‥ ねぇ、ジョー‥‥」
         「‥‥‥ 何 だい フランソワーズ」




         「わたし、達‥‥‥‥ 生き、て 帰れる と 思、う‥‥?」


         「‥‥‥‥‥断言、出来ない よ 僕‥‥」




         「「 ‥‥イワン 」」


         縋るよう な 瞳(め)、で フランソワーズの腕の中に収まる イワンを 見つめる ジョーとフランソワーズ。















         “ ‥‥‥‥ アト、ハ 神 ニ祈ルシカ ナインジャ ナイ‥‥‥?”












back

11600hit‥‥だったような気がします jui様へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送