その .




















願わくは、再び相見えん事を
喩え此れが今生の別れだとしても



そう云って別れた、半年前。








その科白(ことば)は、確かに本心




















戦いは終局を迎え、彼等が其々(それぞれ)生まれ故郷へ戻ったのは、一瞬。
既に平和は仮初めと成り果て、彼等は再び戦場に赴く。


今迄以上、の 苦悩、と 過酷な運命、と

───人知を超えた、能力(ちから)を、背負って。








たかが半年
されど半年








「還る、から」




夢現で逢ったのは、4日前。
連絡を受けたのが、3日前。



彼等が相見える時。其れは戦いの始まり。
───その意味、を。その重さ、を。
充分理解、して 不謹慎、だと判っていても、綻ぶ顔を隠せない。



感情、とは我が侭且つ己に至極従順なもの。





共に在ったのは僅か1年余り。

生きてきたどの時間よりも、濃密な瞬間を共に過ごして。
出逢ってから、此れ程長期間離れて暮らしたのは、初めてで。
逢えない日々を如何に過ごしていたか、今では思い出せない程。



慣れたハンドル捌き。アスファルトの白い軌跡に沿って停められた、一際目立つ赤のオープンカーから降り立つ 栗色。
浮き立つ心そのまま、の 軽い足取り。
彩る、淡い微笑。

踏み入れた、ざわつく空港ロビーの中、目指すは優しい亜麻色の髪。





「フランソワーズ」















───…何、で ここにいる、の?」




出迎えに託(かこ)けデートの1つも、と 目論んだ矢先の狙い済ましたかの如く、邪魔に寄り添う 影。
ジョーにとって宿敵、もとい天敵、とも称せる、人物。
しかも其れ、は ジョーが大っぴらに想いを寄せる彼女の隣を、ちゃっかりと陣取り。

見紛う事無き───自称 無敵のサイボーグ002、ジェット・リンクの姿。




「ふっふっふっ……それはだなぁっ、オレ様がアメリカから帰って来たからだっ!」
「じゃなくてっ。何、で 帰国が同じ日…────



言及すべく詰め寄る踏み出した処、申し訳無さそうに呟かれた微かな、声。



「誘ったの わたし、なの」
「…え?」
「ジョーを驚かせようと思って黙ってたんだけど────…


長い睫毛を伏せ、視線を彷徨わせる、ジョーとフランソワーズ。
フランソワーズの胸中は申し訳無さ、が満ちていて。



「予告無しはやっぱり迷惑、よね……御免なさい」



ジョーの胸中はそんな表情(かお)をさせてしまった、そんな気持ちにさせてしまった己の迂闊さ、と…────



「そんなこと、無い、よ?…御免、僕の云い方、が悪かったんだ」



その引き金になったであろう、元凶の存在、に対して。────…勿論、逆恨みであるが。

引き攣る表情筋、を 強靭なる意志の力で強引に捩じ伏せ、人好きのする柔らかな笑みを漂わせ。
安堵したように()を細めるフランソワーズの死角で天敵を視線のみで威嚇する。

逢瀬、と称するのは些か大袈裟かも知れないが、電話以外の、逢うのは実に半年振りであるのもまた事実で。
そもそも望んで別離(わか)れた訳ではない。
選んだ───…其れ以外の案が無かった、から。



戦う為、の 存在
ならば
終結した、あとは…────






『来るべき未来(さき)の為に』






今は敢えて──────…




理不尽な、理由

───其れでも




選んだ




己以外の誰か、が
出逢った優しき人々、が



誰より大切なあなた、が
微笑んでくれるのなら





云い聴かせた日々


色褪せぬ 想い


───なのに。



『天敵』『宿敵』『元凶』








順調に肩書きを増やしてゆく、特徴有る髪型の彼、は見計らったかの如く現れ、ジョーの思惑の邪魔をする。
予定も計画も水の泡、と云うヤツ、で。


    ───ジェット、許すまじ



ジョーがそう決意したか否かは定かではない。










「ジョー?」

不意に掛けられた声にダークな思考を強制的に途絶えさせる。


「…行こうか」


ジョーはフランソワーズの荷物を手に取ると、駐車場へと2人を促した。













『天敵』

ジョーにとってのジェットが其れ、で。
ジェットにとってのジョーが其れ、で。

そんな2人が揃っている場、で物事が平穏に済む筈もなく。




───…何でフランの荷物だけを持つ?」
「男の荷物なんて持ちたくないも〜ん」




空港ロビーを抜ける際にひと悶着。




「何だ その態度はっ ジョーのくせに生意気なっ!」
「なっ!?どういう意味だよ、それっ!!」
「まーんまの意味!」




お互い、でこピンやら蹴りを繰り出す姿は、仔犬───…『子供』がじゃれている様にしか見えない。
それは見慣れた、非日常。

戦闘(日常)の隙間を埋める 平和(非日常)
困ったよう、な嬉しいよう、な 複雑な心持ちで瞳を細め、彼女 は。


───微笑う




差し込む陽光に煌く髪を指で玩びながら。


───睫毛を伏せる




足許に落ちる影、を眺めながら。







しかし、その瞳に映るのは。













過去でも未来でも無い、久遠の彼方
















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