ひとりごと










         『 もっと完璧なサイボーグだったら 』




              あれは 絶対 に 云ってはいけない 科白(ことば)
              彼を 傷つけた  それだけは 絶対に 厭 だった───────‥のに










         1. side.F


         月明かりが綺麗な深夜のコクピット。




         「‥‥ごめんなさい‥‥」




         その夜はジョーが見張りの日。彼の態度は変わらない 優しさ のまま で。
         それが一層、胸を締め付ける。

         「何、が?」

         ふんわり と、微笑を浮かべた彼が俯いたわたしの顔を覗き込む。
         「‥‥あの さっき の こと‥‥わたし あなたに酷いこと、云った」
         視線を宙(ちゅう)に彷徨わせるようにして、彼は 一瞬 考え込んだ。
         「さっき?‥‥あぁ それならあの時も謝ってたじゃない どうしたの?」
         あんな科白 気にもしてないよ とでも云う様に、笑って‥────くれる。
         わたし が 傷付かない よう に──────────。
         優しい 優しすぎる 彼。────でも 瞳(め)が 哀しい。




              そんな 瞳 が 視たい 訳じゃ‥──ない
              だけど そうさせているのは─────‥‥ わたし




         不意に涙が溢れてくる。わたしの 意志 と 反した 場所(ところ)で。
         「‥‥え?フランソワーズ あのっ‥‥!」
         一瞬にして瞳の色彩(いろ)が変わる。うろたえる その瞳の彩(いろ) は。
         何処か 寂しさ を宿して 淡く 揺らめく───────




              ─────────あ いつもの ジョー だ




         わたしの 大好きな 誰よりも 護りたかった 瞳。
         だからこそ 許せなかった 自分の 科白(ことば)。
         「うわぁぁっっ!‥‥フラン 大丈夫? 具合 悪いの?」
         力が抜けて床に座り込むわたしの躯(からだ)を支えるように手を差し伸べる。
         「うぅん 大丈夫 ‥‥ ごめん ね」
         二人して床に座り込んだ。彼がわたしの頭を自分の肩に乗せてくれる。
         髪を優しく撫でる 手────────その 優しさ、に。



         「 ふふっ 」



         思わず笑みが零れてしまう。そんなわたしを見て彼は呆れるように溜息ひとつ。
         「女の子って判らないなぁ‥‥ 泣いたかと思ったら、もう笑ってる し」
         今度は わたしが、溜息をつく番。
         「あなたに 『 お姉さん 』の心理が判る なんて 100年 早いわよ」
         「えー!?1コしか変わらないじゃないかぁ」




              ─────────そう 云ってくれるのも あなたの 優しさ




         「あなたが 子供過ぎるから よ」
         「‥‥フランって ‥‥さり気なく 酷いこと 云ってない?」
         「あら そう? でも本当のコト でしょ?」
         「だから‥‥ その辺が 酷いんだって ‥‥」
         全身脱力してがっくりと 項垂れる彼。彼の髪がわたしの頬をくすぐる。
         性格そのままの─────‥‥ 優しい 感触。
         「そういう処が あなたの『 可愛い 』ところ よ」
         「それもちょっと‥‥ 女の子に『 可愛い 』って云われる 僕の立場 は?」
         わたしを見つめる彼の大きく見開かれた瞳には、先程の哀しい彩は視られない。


         「良かった」
         「え、何が?」
         「‥‥うぅん 何でもないの 只の独り言」


         「 ‥‥‥? 」


         彼は、頭の周りに『 ? 』マークを飛ばしている けれど。
         いいの、知らなくて──────これは わたしが 決めた こと。




              強くなる あなたを 護れる位────何時も 笑ってくれる様に



















         『 もっと完璧なサイボーグだったら 』




              思わず 溢れ出た 君の本音 それがどんなに重い『 言葉 』なのか

              ─────────僕は 知ってる










         2. side.J


         月明かりが綺麗な 深夜のコクピット。




         「‥‥ごめんなさい‥‥」




         独り見張りをしていた僕へ、フランソワーズが おずおず と口を開いた。
         今にも泣き出しそうな 瞳。でも 綺麗 だと思う ‥‥─────不謹慎、だけ ど。
         「何が?」
         「あの さっき の こと ‥‥わたし‥‥あなたに 酷いこと 云った」




              ─────────酷い こと?




         すぐに思い当たった──‥けど、君の気持ちも ‥‥────判る から。
         「さっき‥‥?あぁ それならあのときも謝ってたじゃない どうしたの?」
         ────判る から。少しでも 不安を取り除きたくて笑って みせる。




              だから そんな 表情 しない で

              ─────────って あ あれ !?




         彼女の瞳から、涙が溢れて くる。
         「‥‥ え? フランソワーズ あのっ ‥‥!」
         僕はどうしようもなくて 只 うろたえるばかり で。
         どうしたらその涙は止まるんだろう。気の利いた科白ひとつ 云えやしない。

         でも‥‥ 潤んだ 碧の瞳 も とても 綺麗 ────‥で。




              もっと近く、で 見ていたい ‥‥ 触れたい ‥‥

              ─────────って 違うだろ!?
              今やることは 彼女の涙を止める事!




                                       ‥‥考えなきゃ考えなきゃ考えなきゃ‥‥




         すーはー と深呼吸一つした瞬間。
         彼女の躯(からだ)が、所在なげに傾いた。
         「うわぁぁっっ!‥‥ フラン 大丈夫? 具合 悪い の?」
         傾いた 彼女の躯 を 引き寄せて 腕の中に 納(おさ)め、て‥─────




              ─────────あ どさくさ紛れに 思いっきり、触っちゃった
              ─────────これって 役得? なのか な ‥───やっぱり


              〜っ!ちがぁぁ〜うぅぅっ! 今は そうじゃなくてっ!!




         柔らかい 髪、柔らかい 躯。微かに香る 甘いコロン。
         「うぅん 大丈夫‥‥ごめんね」




              うっわ〜 ‥‥

              ─────────心臓が ばくばく する




                          戦ってるとき より 脈 早い かも ‥‥‥ 




         二人して 床に座り込む。自分の心臓の音が 耳について────‥仕方が ない。
         どさくさまぎれに彼女の頭を、僕の肩に乗せる。ついでに髪も撫でてみたり。




              ─────────すっごい 幸せ  かも

                               ‥‥‥この心臓の音さえ なければっ!



              ─────────大丈夫 かな〜

                               ‥‥‥この音 フランに聴こえてないといい けど



              ─────────『 003 』 だしなぁ ‥‥

                               ‥‥‥何て云って『 誤魔化せば 』いいんだろう ‥‥‥




         「ふふっ」

         不意に 彼女が────微笑う。
         泣いている表情(かお)も 綺麗だけど、微笑った表情は 天下一品。
         心臓が一段と高鳴る。




              うっわ〜 ‥‥ 不意打ち だよ

              しかも意識してやってる訳じゃない処 が





              ─────────心臓に悪い よ




         「女の子って判らないなぁ‥‥ 泣いたかと思ったら もう笑ってるし」
         「あなたに『 お姉さん 』の心理が判る なんて 100年 早いわよ」
         「えー!?1コしか変わらないじゃないかぁ」




              ─────────何時だって どきどき するのは 僕 だけ で




         「あなたが子供過ぎるからよ」
         そんなコト 云うってる彼女も綺麗。思わず見とれてしまう。
         「‥‥フランって‥‥さり気なく酷いこと、云ってない?」




              ─────────全く こっちの気も ‥‥ 知らないで




         「あら、そう?でも本当の事でしょ?」
         「だから‥‥‥その辺が酷いんだって‥‥」




              ─────────僕だけ が 振り回される




         がっくりと項垂れた先に彼女の頬があった。甘い吐息が 僕の頬にかかる。

         どくんっ!どくん どくん どくん ‥‥‥





              うわあぁぁぁぁっっ〜〜〜 ‥‥‥‥‥




         本当に悲鳴を上げる訳にも行かないから 心の中で叫んでみる。
         「そういう処があなたの『 可愛い 』ところ よ」
         「それもちょっと‥‥ 女の子に『 可愛い 』って云われる 僕の立場 は?」
         「良かった」
         「 何が? 」




              ─────────ずるい よ フラン 僕ばっかり どきどきして さ




         「‥‥ うぅん 何でもないの 只の独り言」
         「‥‥‥?」

         彼女の云っている意味は 判らない けど。



         ま いっか  思いがけず二人っきりで過ごせたし
         役得、も──‥‥かなり、あったし






                   何より 君 が 傍で微笑ってくれれば ね












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人生踏み外した記念すべき初サイゼロ2次創作 いやぁ若かったなぁ‥‥
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