埋(うづ)み火
泣かない で
ここ、に 居る────‥わ
無言の風、が 2人の間を すり抜けて ゆく。
緩やかに
穏やかに
密やかに
──────────優しく
自分に躯(からだ)を預けている『 死神 』の渾名(あだな)を持つ彼の人の髪を梳く。
銀色 の、クセのない それ は フランソワーズの指の間を 零れ落ちてゆく。
さらさら
さらさら
痕跡(あと)すら 残すこと、なく
離れてしまえば それっきり
まるで自分のようだ、と フランソワーズは 思う。
こんなにも 近くに 居て
こんなにも 遠くに 居る
近くて
────────遠い
冷えた躯、も
熱い想い、も
喪って 尚、鮮やかな 女性(ひと)の モノ
フランソワーズに向けられることは─────有り得ない。
─────────羨ましい
純粋、に そう思う。
喩え、大きな『 代償 』を 払ったと して も。
ちりちり と
消えること ない
─────────『 埋(うづ)み火 』の よう に
その心の 奥底、に 根を張るよう、に
何時までも
何時までも
他でもない『 あなた 』の こころ、を『 独占 』出来るなら
─────────あなた、が その『 躯(うつわ) 』を 喪う まで
この上ない 至福の時間(とき)──────────
柔らかな 風、が 吹く。
「‥‥済まない」
低く、穏やかに吐き出された 科白(ことば)と共に アルベルトはゆっくり と 顔を上げた。
「何か 謝るようなコト、した の?」
「‥‥いや」
「だったら いいじゃない」
「みっともない処 を見せた、な」
「あら 格好良かった わよ?」
くすくす、と 声が 風に 流されてゆく。
「‥‥悪趣味、だな」
「今頃 知った?」
「‥‥いや‥‥」
口では 否定するもの の、その瞳(め)の奥は 穏やかな光、を 湛えていて。
そこに 居る、のは
皮肉屋、で 冷静、で
そのくせ酷く 熱い
──────────普段通りの『 彼 』
その声、も
その涙、も
フランソワーズが 望んだとて
決して くれることのない
『 彼 』──────────
「‥‥泣いたコト、を 他の皆に『 内緒 』にしてあげても いいわ、よ?」
「交換条件、か」
「いけない?」
「‥‥やはり 悪趣味、だな」
「使えるモノは何でも使う主義、だから」
あなた、が わたし、を 見てくれる なら
喩え、刹那の時間(とき)でも
ね ぇ‥‥?
風が 吹く
風が 吹く
何もかも、かき消すよう、に─────────
────只一つ
フランソワーズの『 想い 』だけ、を 置き去り に。
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『初夏の焔』の対(笑)。四祭り作品がコレでいいのか‥‥?
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