恋ひ心
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忘れて久しい感覚、に 戸惑って うろたえて 牽制のつもり、の、 己自身すら傷つける、諸刃の剣 唐突に気付いた、真実 魔人像へ 遠い、微笑み 過ぎった、悔恨 ───知って、しまった 知りたく、なかった 知りたくなんて、なかった───…のに 燻り続ける、火種 「フランソワーズがおかしい」 最初に、そう云ったのは ジェット。 「おかしいのは お前の頭の中身」 煙草を吸いながらアルベルトは相変わらず容赦のない 「違ぁぁ〜うっっ!」 があっ、と歯を剥き出し、一瞬食って掛かるも、今日に限り早々に引き上げ、大きな溜息と共に乱暴にソファに座り込んだ。 それはある日の午後。 暑くもなく寒くもなく───…快適、と呼べるであろう、酷く緩慢な陽気。 「 「───…戻った?」 「だってよ あんなに『ジョー命』って表情、してたじゃねぇか!」 「…そうか?」 「なのに! ジェットの視線の先───…微かに覗く、キッチン。お茶菓子の準備をする、フランソワーズとジョー。 「瞳がどうかしたのか」 「あれじゃ…脱出する前、みたいじゃねぇか…」 死線の牢獄 望むは滅亡 全てを無に 「───────…」 「…正直、オンナの 「……けど?」 「今よりはずっと 良かったぢゃね〜か…」 そう云ったきり、クッションを抱え込み、ジェットはソファの上で長い手足を縮め、丸くなる。 アルベルトは無言のまま、フランソワーズとジョーを眺めた。 「………」 顔を見合わせて楽しそうに微笑う2人の姿は、傍から見れば ほほえましい光景としか思えない。 ───だが その瞳の中には以前に感じた甘やかさが無く、友人か親兄弟と共に在る時のような 表情。 アルベルトやジェットに向ける瞳と───…同じ 内包される想いは全く別のモノ、で 「───…複雑、だな お前も」 「何だよ その含みのある云い方」 「いや別に」 ぱたぱたぱたぱた───────… スリッパの音と同時に フランソワーズが ひょいっ とリビングへ顔を出した。 「ねぇ、スコーンに添えるの クリームとジャム どっちがいい?」 「俺はどちらでもいい」 「………………」 「ジェットは?両方?」 「………………」 無言のジェットにフランソワーズは 不思議そうに小首を傾げる。 「ジェット?具合でも悪い?」 「…………」 「?変な ジェット」 その科白に弾かれたように ソファから立ち上がった。 「変なのは お前だろっ!?」 「ぇ、何!?急、にっ 大きな声を出っ…」 ジェットはフランソワーズの腕を掴むと、小さく悲鳴を上げるフランソワーズを自分の腕に抱き込んだ。 「っ、何…?」 「何 誤魔化してんだよっ!」 「…ジェット…?」 「オレは騙されねぇぞっ…らしくねぇよっ」 フランソワーズは、そっと 床に視線を落とす。 |
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