銀 silver moon 月 辺りに響く 鳥の鳴き声。 朝日が差し込むリビングで、ジェットは瞳(め)を醒ました。 「‥‥ぁ?リビング‥‥?何、で‥───」 起き上がりつつ、昨夜の記憶を辿る。瞳を醒ます為に、軽く頭を振った視界に飛び込む 亜麻色の髪。 そっか‥‥ 昨夜(ゆうべ)───────‥ はあぁっ と、大きな溜息を付いて辺りを確認する。 誰もまだ起きてはいないようだ。幸いと云えば幸い。亜麻色の髪の延長上に いつの間にか存在している 栗色の髪。 「なんぢゃ こりゃあぁぁぁっ!?」 しかも2人にはちゃっかり 毛布まで掛けてあり、その上‥フランソワーズとジョーは 向かい合って 眠っているのだ。 ヒトの気も知らず すぴすぴ と それは気持ち良さそう に。 「なっ なっ、なっ なっ───‥」 ジェットの文句は強制的に遮られた。─────彼、によって。 “ダッテ風邪デモ引イタラ大変ダロウ?” ゼロゼロナンバーズ最強の 赤児(あかご)────イワン。 “ダカラ、じょーヲ起コシテ毛布ヲ掛ケテモラッタ” 「叩き起こした の間違いだろ」 “人聞キガ悪イナァ ふらんガ風邪引クッテ云ッタラ快ク引キ受ケタョ” 「よりによって何でコイツなんだよっ」 イワンにしては、珍しく『沈黙』が 在って。 それ、がジェットを恐怖のどん底に突き落とそうと手薬煉(てぐすね)牽(ひ)いて、待っているように感じる、のは 気のせい だろうか‥────否、気のせいだけではあるまい。 “決マッテルジャナイカ ソノ方ガ面白イ カ・ラ” そう云い放つと、イワンは にやり と笑った。 「〜〜〜〜〜!!!!!」 “意外ト晩生(オクテ)ダシ‥‥ イイ人、ナンダネ” 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」 科白(ことば)から想像するに 昨夜のコトは全て知っている‥────らしい。 何もしなかった────‥正確には『出来なかった』コト、を。 がっくり と肩を下ろし、ジェットはリビングを後にした。 「‥‥行ったか」 “ウン コレカラガ面白イ処ダヨ” ジェットの死角から、音もなく現れたアルベルトがイワンに『何か』を手渡した。 片手には インスタントカメラ と─────────‥‥ 「どわあぁぁぁぁっ!!何ぢゃ こりゃあぁぁぁぁっ〜!!!」 洗面所からはジェットの悲鳴。 イワンに渡されたモノ、は 2枚の写真。 1枚は、イワンがジェットの鼻を掴んで 自分の足で立ち上がっている姿。 1枚は、イワンが嬉々として 油性マジックで ジェットの顔に、落書きをしている姿。 ────ちなみに12色フル稼働である。 「ほぅ 上手いもんじゃないか」 “マァネ” イワンとアルベルトはお揃いの『サワヤカ笑顔』で にやり と笑った。 |
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