その .




















微かに芽吹く想いの行く末───…


















「うっわ〜っ さっみ〜っ!!」



がっしゃん、と 派手な音と共にジェットが、元居た後部座席へと飛び込んで来る。




───…ほら」




差し出される、ペットボトルのミネラルウォーター。



「平気か?」
「ん、眠ったから ──…有難う、ジェット」
「気にすんな」



見計らったようなタイミングで運転席のドアも開く。




「早かったじゃないか お前にしては」
「……どういう意味だよ そりゃ」
「別段深い意味はないが?」
「嘘臭ぇ」
「他人の言葉が信じられんとは…寂しい奴だな」
「…テメェが其れを云うか!?」


ケッ、と小さく舌打ちして。
軽口が飛び交う、決して広いとは云い難い車内を、缶コーヒーと煙草の箱が宙を舞う。




漂うのは、穏やかな、空気




異国の地で漸く手に入れた、であろう










薄氷の上の平和










ちりり、と
胸を焼く痛みが消えることは

───…決して無い、けれど





あなたの微笑を
あなたの眠りを










『護りたい』











只 其れだけで、ここ迄 来た。








この気持ちを何と呼べばいい?

























「…で、何 話してたんだ?」



不意打ちに浴びせられる科白(ことば)



「べっ、別、に…っ」



明らかに狼狽しているジョーを尻目にアルベルトはアクセルを踏み込む。プルトップを開け、1口飲んでから徐に真新しい煙草の封を切った。







シュポッ



暖かなジッポの「音」が車輌(くるま)にこだまする。




「おらっ 吐け吐け 吐きやがれっ!!」

「かっ…関係ない、だろ!?」

「大有り、なんだよ コッチはなぁぁっ!!!」




返答によってはタダぢゃおかね〜ぞっ、と叫びつつ、ジョーの首を絞めるジェット。
───何処までも相変わらず、な2人である。






「……話は出来たか?」

「まぁ 其れなりには」




フランソワーズが花のように微笑(わら)う。




───…充分だ」




アルベルトは空いている手でフランソワーズの頭を自分の肩へと抱き寄───…




「ったく…油断も隙もないオッサンだな オイ」



後部座席から長い腕を伸ばし、遠慮や容赦の欠片無く、2人の隙間を広げるジェット。







軽口、と
紫煙、と
微笑、と

纏う気配(くうき)


全て、が


胸を占める 想い









大切、で
大切、で
大切、で







この気持ちを何と呼べばいい?














「…おかえり、皆…」











    ずっと先、の
    永遠(とわ)の、その未来(さき)でなら







    その名を知る事が出来る、かな────…










『ずっと待ってた』











    ───大丈夫


       何が、有っても












あなた、が 傍に居てくれるなら
















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